雑談

インデックス投資の数理的考察

tetsu

はじめに

名著「ほったらかし投資術」を読んで

今の北大の任期が迫ってきているのに対し、ここ数年就活をしていますがうまくいかないこともあって、ダメだったときのバックアッププランも考えることにしました。

ずっと、株はデイトレーダーのイメージがあって、ギャンブル性もあるし、株価チャートに張り付いていなければならないイメージがあったため、研究職の私には関係ない世界だと思っていました。

しかし、新NISAも始まって、いろいろ情報が入ってくるようになりました。

それで色々調べているうちに、山崎元さんと水瀬ケンイチさんが書かれた「ほったらかし投資術」(朝日新書)を読んでみました。

ほったらかしてお金が増えるならば、研究職でもできそうですよね。

この本では、過去の統計に基づいて、どれくらい何に投資するとよいかということを説明しています。

自分でデイトレイダーをするほどの時間がなければ、プロに株の運用(売買)を任せるという方法をアクティブ運用といいます。

株式市場全体の動きを表すために計算されている指数を株式指数といいます。

株式指数に連動するように運用(売買)する方法をパッシブ運用、または、インデックス投資といいます。

ほったらかし投資術で進められているのは、このインデックス投資です。

アクティブ運用でもインデックス投資でも、株の運用を任せるので、信託報酬という報酬が発生します。

アクティブ運用の場合、プロが利益を得るための情報収集や決断をするため、信託報酬が高くなっているのに対して、インデックス投資の場合では、株式指数に合わせるだけなので、信託報酬が低く抑えられています。

インデックス投信の信託報酬が低いのは、過去に価格競争があったことも関係しているそうです。

私は知らなかったのですが、株価は短期的に見れば高くなったり安くなったりしますが、長期的に見れば、世界経済が経済が成長する限り、基本的に高くなるものだそうです。

世界の経済が成長し続けると信じる理由は、世界の人口が増えているからです。

要は、顧客が増えれば利潤も増えるので経済成長するということですね。

なんとなく、経済が活発なところで人口が増えるとその通りな気がしますが、そうでないところで人口が増えたところで、あまり世界経済に寄与しない気もしますが。。。

とはいえ、デイトレーダーのように株価の「ゆらぎ」に注目するとギャンブルなのですが、「平均」に注目すると基本的には増えるということです。

ほったからし投資術では、「長期」、「分散」、「低コスト」を投資の三原則とし、そのすべてを満たしたインデックス投資を薦めています。

しかし、株は暴落ということが起こりますので、リスクのある資産です。

リスク資産にどれくらい投資するといいかという目安や、無リスク資産をどうしたらいいかなどについても書いてあるので、仕事で忙しくて時間はさけないけれども投資はやってみたいという方は一読の価値があると思います。

ほったらかし投資術を扱ったブログや動画はたくさんあるのですが、できれば一次資料に当たってみてください。

eMaxis Slim オールカントリー(通称:オルカン)

「ほったらかし投資術」でも、十分に分散投資(平均化)されていて低コストな商品としてeMaxis Slimオールカントリー(通称:オルカン)が薦められています。

オルカンは今や大人気なので、知っている方も多いでしょう。

私の理解では、オルカン全体で持っている総資産があって、発行している口数(株の数に対応するもの)で割ったものに対応するのが基準価格です。

オルカンで投資される株(銘柄)の中には、配当金をだすものもあります。

配当金は再投資という形で総資産を増やすのに使われます。

信託報酬(コスト)も総資産から引かれます。

従って、基準価格は配当金とコストを反映した価格であり、オルカンを買ったときの基準価格と売ったときの基準価格の比で損益がきまります。

単純明快ですね。

一括投資の場合

数理解析

ここからは、ちょっと数学に慣れた人用のお話になります。

まず、時間t=0t=0S0S_0円だけ一括で投資し、運用した場合を考えます。

この時、時間ttでの資産S(t)S(t)は、

S(t)=S0(1+r(t1)τ)(1+r(t2)τ)(1+r(tn)τ)S(t)=S_0 (1+ r(t_1)\tau ) (1+r(t_2)\tau ) \cdots (1+r(t_n)\tau )

となります。

ただし、時間τ\tau ごとに1回、r(t)τr(t )\tau だけ運用益が生じるとしますが、株の場合、運用益はその時々によって変わりますので時間の関数とします。

オルカンの場合、τ\tau は一日ですね。

前節でも申しましたように、r(t)τr(t)\tau にはコストも含まれています。

r(t)τr(t)\tau が負の値の場合には損益です。

関数r(t)r(t)の引数となっているt1,t2,,tnt_1, t_2, \cdots, t_nは、運用を始めてから1回目、2回目、・・・、nn回目に運用益が出るタイミングで、

tn=nτt_n =n \tau

です。

指数と対数の性質を使うと、資産S(t)S(t)は、

S(t)=S0ek=1nlog(1+r(tk)τ)S(t)=S_0 {\rm e}^{\sum_{k=1}^n \log (1+r(t_k)\tau )}

と書くことができます。

ここで、e{\rm e}は自然対数の底で、log\logは自然対数です。

1回ごとの運用益は0.数%から数%程度ですので(r(t)τ1r(t)\tau \ll 1)、

log(1+r(t)τ)r(t)τ12r2(t)τ2+\log(1+r(t)\tau )\approx r(t) \tau -\frac{1}{2} r^2(t)\tau^2 +\cdots

とテイラー展開することができます(この式の\cdotsは、小さくて無視できる項です)。

本当は最初の項r(t)τr(t)\tauだけ残せばいいのでしょうが、注意すべきことひとつあるので第二項まで残しておきます。

すると、資産S(t)S(t)は、

S(t)S0ek=1n(r(tk)τ12r2(tk)τ2)S(t)\approx S_0 {\rm e}^{\sum_{k=1}^n(r(t_k) \tau – \frac{1}{2} r^2(t_k) \tau^2)}

となりますね。

これまでは、運用益が出る度にどのように資産が変わるかということを計算してきたわけなのですが、長期投資を考えると、運用益が出るタイミングを均して考えることができます。

つまり、指数の肩の部分を

k=0n(r(tk)τ12r2(tk)τ2)0rdtτ(r(t)τ12r2(t)τ2)\sum_{k=0}^n(r(t_k)\tau -\frac{1}{2}r^2(t_k)\tau^2) \approx \int_0^r \frac{dt’}{\tau} \, (r(t’) \tau – \frac{1}{2} r^2(t) \tau^2)

と近似できるということです。

もし、第二項を無視してしまうならば、資産は、

S(t)S0e0tdtr(t)S(t)\approx S_0 {\rm e}^{\int_0^t dt’ \, r(t’)}

となります。

なぜ第二項をのこした方がいいと思ったかというと、運用益を平均r0r_0とその周りの揺らぎδr\delta rに分けましょう。

r(t)=r0+δr(t)r(t) = r_0 + \delta r(t)

ただし、ゆらぎδr\delta rは十分小さく、損益により資産が0になったりマイナスになったりはしないと仮定しましょう。

定義上、ゆらぎの平均もゼロはです(δr=0\langle \delta r \rangle = 0)。

すると、

0tdtτ(r(t)τ12r2(t)τ2)(r012δr2τ)t=refft\int_0^t \frac{dt’}{\tau } (r(t) \tau – \frac{1}{2} r^2(t) \tau^2) \approx ( r_0 – \frac{1}{2} \langle \delta r^2 \rangle \tau) t = r_{\rm eff} t

となります。

ただし、δr2\langle \delta r^2 \rangleはゆらぎの自乗平均を表し、簡単のために、

reff=r012δr2τr_{\rm eff} = r_0 – \frac{1}{2} \langle \delta r^2 \rangle \tau

と置きました。

つまり、運用益のゆらぎは、プラスになったりマイナスになったりするのですが、平均的に見たらマイナスに働くということです。

結局、資産は、

S(t)=S0erefftS(t) = S_0 {\rm e}^{r_{\rm eff} t}

となります。

解析からわかること

前節の解析から、資産は時間とともに指数関数的に大きくなることがわかります。

また、資産は運用する時間によるのですが、いつ運用を始めるかということにはよりません。

しかし、これは、単位時間当たりの運用益r(t)r(t)自体は時間によるけれども、その背後にある確率は時間によらないという仮定から来たものであるので、実際に成り立つかどうかわかりません。

単位時間あたりの実効運用益であるreffr_{\rm eff}は配当金やコストなどが(ゆらぎによる効果さえも)含まれたものですので、オルカンなどでいわれている年利5 – 7%はこれに対応します。

運用時間が短く、refft<1r_{\rm eff} t < 1であるときには、資産は

S(t)S0(1+refft)S(t) \approx S_0 (1 + r_{\rm eff} t)

と近似することができます。

これは、元本のみに運用益がかかることを意味しており、「単利」の状況だということを表しています。

一方、運用時間が長くrefft>1r_{\rm eff} t > 1となるとこのような近似が使えなくなりますので、複利の効果が期待できます。

したがって、複利が効くまでの時間tct_{\rm c}

refftc1r_{\rm eff} t_{\rm c} \approx 1

から見積もることができます。

年利5-7%ですと、時間tct_{\rm c}は15-20年となりますので、巷で15年は保有しろと言われているのは、それに対応するのでしょう。

逆に、○○円から複利が実感できるという動画も見受けられますが、どちらかというと資産額というよりは時間が複利効果には重要で、額は感覚の問題かと思います。

ところで、国債の利率1%だと複利効果が効くまで100年程度かかります。

銀行の利息0.3%だと300年以上です。

インデックス投資の15-20年は長いですが、十分現実的ですよね。

その意味で、インデックス投資は、銀行預金や国債と一線を画すのだと思います。

ただし、今回の解析では暴落などの現象は考慮に入れられていないことは含みおきください。

基本的には、資産シミュレータの範囲内を数式に起こしてその性質を見てみましたという話にとどまります。

積み立て投資の場合

数値解析

つぎに、積み立て投資の場合について考えてみましょう。

ドルコスト平均法という、毎月一定額投資するやりかたですね。

積み立て投資の場合、積み立てごとに投資タイミングをずらすことになるので、資産額は、

S(t)=0tdts(t)ereff(tt)S(t)= \int_0^t dt’ s(t’) {\rm e}^{r_{\rm eff} (t-t’)}

となります。

数学では畳み込み積分といわれているやつですね。

s(t)s(t)は単位時間ごとの積み立て額です。

ほとんどの人はそうしていると思いますし、簡単のために、積み立てを一定額s0s_0にすると、

S(t)=0tdts0ereff(tt)=s0terefft1refftS(t)= \int_0^t dt’ s_0 {\rm e}^{r_{\rm eff} (t-t’)} = s_0 t \frac{{\rm e}^{r_{\rm eff} t} – 1}{r_{\rm eff} t}

となります。

解析からわかること

s0ts_0 tがこれまでの積み立て額の合計となるので、一括投資の場合と比べると、だいぶ資産額が減ることになります。

とはいえ、このモデルでは暴落を考えていないので、暴落対策である積み立て投資(ドルコスト平均法)が一括投資に勝てないのは、そりゃそうかという感じです。

注意点

なんども注意しますが、以上の解析で暴落は考慮に入れられていませんので、その点はご注意ください。

また、以上の解析は、特に資料を参考にせずに行ったものですが、私が最初にこれを考えたとは思えません。

しかし、どう調べていいかもよくわかりません。。。

おそらく、同じように考えている人は多いと思いますので、不変の真理と考えておきます。

なにか載せるべき参考文献をご存じでしたら、ぜひぜひご連絡ください。

アップデートの時に加えさせていただきます。

ABOUT ME
山本哲也
山本哲也
キンメダイ美術館のサイエンティスト
電子工学で学位を取得後、理論物理学者になるため、ドイツ、イスラエル、中国で修行。現在は、習得した理論物理学を使って遺伝子発現制御のメカニズムを明らかにする研究をしています。研究だけでなく、趣味やいろいろ考えていることなどお話ししたいと思います。
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