メカノケミストリー

tetsu

私は現在、化学反応の研究所に勤めているため、大好きな遺伝子発現制御の研究だけでなく、研究所に求められている研究もしなければなりません。

化学反応といっても、基本的には有機合成化学の研究所です。

有機化学は、炭素原子、水素原子、窒素原子などの単純な原子が有機的に結合した様々な分子を生み出す学問分野です。

私は有機化学に全然明るくないのですが、遺伝子発現も化学反応の一種なので、何か学ぶところがあるだろうと思い、現在の研究所に移ることを決めました。

基本的には原材料となる何種類かの反応物を水や有機溶媒に溶かして、温度を上げたり、触媒を加えたりして、どんな分子に変化するか見るのですが、私にはみんな同じことをやっているように見えました。

原材料や触媒は変えるけれども、反応系は同じだからそのように思ってしまうのだと思います。

幸いなことに、私の研究所には、そのような有機合成化学の当たり前を見直して、反応物を溶媒に溶かさず、粉末のまま合成を行う研究をしている伊藤肇先生という研究者がいます。

伊藤先生は、ボールミルという金属のボールと反応物の粉末をチャンバーに入れて、それを機械的に振ることによって有機分子を合成する手法を開発しています。

金属のボールが粉末に当たると、粉末に力が加わります。

その力が駆動力となり化学反応が起きる・・・と思われていたのですが、どちらかというと固体反応物を混ぜることに力が使われているというのが現在の見方です。

機械的に振ったときの粉末の運動は、粉体物理という領域で研究されてきています。

一方、分子の間の化学反応も量子化学や反応速度論などで研究されてきています。

しかし、1 mmくらいの大きさを持つ粉やボールの運動を解析しても、1 nmくらいの大きさの分子が示す化学反応となかなか結び付きませんし、逆に、分子の運動を解析しても、溶液の反応との違いをちゃんと考慮に入れるのは困難です。

そもそも、粉体の運動も化学反応も既存分野との関連が自明なので、全く独立に同じようなアイデアを想起できる人が多数いることが想定されます。

固体の反応物の間の化学反応は、それらの界面で起こると考えられます。

そこで、私は、反応物界面(粉と分子の中間くらいの大きさ!)に注目して、界面での分子拡散や流れを解析するアプローチをとることにしました。

これくらいの大きさで見ると、力と化学反応の両方が重要になるので、その間の関係を調べるのにちょうどいいのです。

研究所では分子の反応を解析するのが得意ですので、とりあえず、そちらとの橋渡しをしてきました。

最終的には粉の運動との橋渡しもしないと意味がないと思っていたのですが、最近、実験を見ていて、現在の理論でも結構本質をとらえられているのかもしれないことに気づきました。

この研究と「レオロジー」という分野の関係についてはまたお話ししようと思います。

ところで、アイキャッチは勉強中なので、できるようになったらつけます。

ABOUT ME
山本哲也
山本哲也
キンメダイ美術館のサイエンティスト
電子工学で学位を取得後、理論物理学者になるため、ドイツ、イスラエル、中国で修行。現在は、習得した理論物理学を使って遺伝子発現制御のメカニズムを明らかにする研究をしています。研究だけでなく、趣味やいろいろ考えていることなどお話ししたいと思います。
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