塩見春彦さんのコメントに感心した件

tetsu

先週は、染色体ワークショップ・核ダイナミクス研究会に参加するために、仙台に出張していました。

この研究会では、私のさきがけ領域「ゲノム合成」の領域代表の先生である塩見春彦さんが招待されていました。

1月に参加したバンクーバーの会議は、ゲノム合成の国際シンポジウムでもあったので、もちろん塩見さんも私も参加していました。

カナダ側からの研究は、実験で古典的なゲノミクスを行い、それで説明できないことをAIで補完するというものが多かったのです。

日本側からは、非常に丁寧な分子生物学実験が議論されていました。

それで先週の染色体ワークショップ・核ダイナミクス研究会の話に戻るのですが、研究会の最後に、塩見さんの講評がありました。

塩見さんのコメントは、「今回の染色体ワークショップ・核ダイナミクス研究会では、AIを使った研究がほとんど発表されなかった。私は、カナダがやっているようなAIを使った研究は嫌いだけれど、これからは必要になってくるのだろう。そのような研究をするのはシニアではなく、若い人たちだ。」という趣旨の内容でした。

どんなに革命的な研究をした人でも、シニアになると若手の研究が嫌いになるというのは、科学史上何度も出てきます。

たとえば、ご存じの通り、「神はサイコロを振らない」という言葉からもわかるように、アインシュタインは量子力学が嫌いでした。

また、アインシュタインの特殊相対性理論と量子力学を見事融合したディラックは、ファインマン、シュウィンガー、朝永が作った繰り込み理論を嫌ったといいます。

なんでこんなことが起きるかというと、次世代のサイエンスを作るためには、シニアの時代とは違ったセンスを必要とすることが多いからなのだと思います。

おそらく、塩見さんは、新しいサイエンスを作っていくとはそういうことであることを理解しているのでしょう。

もちろん、海外ではすでにAIを使った研究が盛んであるし、隣の分野の物理や化学では理論家のほとんどがAIにシフトしている現在、今さらAIを使った研究を始めることが良い手かはわかりません。

しかし、シニアが嫌いだと思うことの中に新しいサイエンスを作るヒントが隠れているというのは、真理なのではないかと思っています。

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山本哲也
山本哲也
キンメダイ美術館のサイエンティスト
電子工学で学位を取得後、理論物理学者になるため、ドイツ、イスラエル、中国で修行。現在は、習得した理論物理学を使って遺伝子発現制御のメカニズムを明らかにする研究をしています。研究だけでなく、趣味やいろいろ考えていることなどお話ししたいと思います。
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