岩本光正先生に教えてもらったこと

tetsu

私は電子工学(エレクトロニクス)で学位をとりましたが、その時の指導教官の先生が岩本光正先生でした。

私は学部から博士までの6年間と、助教として1年間、フランスから中国に移る間の約半年間、岩本先生の研究室でお世話になりました。

岩本先生は、誘電物理、絶縁体工学、有機エレクトロニクスの専門家でした。

有機材料を使って発光ダイオード(いわゆる有機EL)やトランジスタ(有機ELディスプレイのスイッチングに使う)を作るエレクトロニクスは、岩本先生の時代に芽吹きました。

対応するデバイスがすでにシリコン半導体をベースとしたエレクトロニクスにあったので、上記のデバイスに使う有機材料も半導体と考える研究が主流の中、有機材料は絶縁体に近い性質を持つため、絶縁体と考えるべきだと岩本先生は考えられ、絶縁体の理論をベースとして有機材料で作ったデバイスの動作原理を明らかにする研究をされていました。

教育者としても非常に素晴らしい先生で、いつも学生のことを考えてくれていました。

恩返しは私の学生になる人たちにも同じようにしてあげなさいと言うような先生でした。

そのような岩本先生ですが、残念ながら昨年(2025年)の11月に逝去されました。

ちなみに、岩本先生は実験家で、私が岩本先生のところで学位をとったことを知った人はよく驚きます。

岩本先生に教えていただいたことの中で、今活きているものもあれば、その後の経験によって間違えだと分かったこともあります。

ここでは今活きているものを少し紹介します。

大きなところでいうと、見かけに惑わされず本質を見なさいといつも言われていました。

人の発表を見たり、論文を読んだり、実験結果を見るときに、その本質を考える習慣はこのときに身についたと思います。

あと、常識を超えることと常識を知らないということは違うということもおっしゃっていました。

常識とは結構難しいもので、意識していれば疑うことができますが、意識できずにいて信じていることも多々あるので、次のステップでは私たちが常識だと思ってしまっていることを意識することが重要になるので、常識を知ればいいというわけでもないのですが、まずは正しいと思っていいでしょう。

抵抗やコイルなどの単純な電気素子を除いて、ダイオードやトランジスタなどの電子デバイスは、有用な機能を発現するように、材料の界面を利用して設計することが多いです。

私は、細胞も何か有用な機能を発現するためには、界面を利用しているに違いないと考える傾向にありますが、そのような考え方は電子工学での岩本先生との研究経験に根付いたものだと思います。

さらに、学部のころから論文執筆の機会を与えてくださり、修士1年の後半くらいには、自分で問題を見つけて、それにアプローチし、結果を論文発表するサイクルができるようになりました。

このような研究者として生きる手段を教えてくださったのも岩本先生です。

現在の研究を進めていくことができる礎を作ってくださったことを大変感謝しております。

ご冥福をお祈りしています。

ABOUT ME
山本哲也
山本哲也
キンメダイ美術館のサイエンティスト
電子工学で学位を取得後、理論物理学者になるため、ドイツ、イスラエル、中国で修行。現在は、習得した理論物理学を使って遺伝子発現制御のメカニズムを明らかにする研究をしています。研究だけでなく、趣味やいろいろ考えていることなどお話ししたいと思います。
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