投資に時間がかかるわけー複利の考え方

tetsu

はじめに

前の記事で投資には時間がかかるということを言いました。

利益が出るまでに時間がかかるという訳ではありません。

現にデイトレーダーは、1日に株を売ったり買ったりして利益を出しています。

しかし、多くの研究者は株に張り付いているほど時間はないと思いますし、短期トレードで収益を得つづけることができる人はまれです。

そうすると、戦略としては、複利を利用して長期投資で無理なく稼ぐということになります。

何に時間がかかるかというと、複利が効くまでに時間がかかるということです。

今日は複利についてお話ししたいと思います。

少し数学を使います。

たぶん合っていると思いますが、何か間違ってたらご指摘ください。

複利について考える

単利と複利

銀行にお金を預けると、利息が付きます。

例えば、今の銀行の普通預金の利息は、0.5%程度(正確には、0.5%/年)ですので、100万円(1,000,000円)預けていたら、1年で5000円利息が付きます。

正確には、税金を取られるので増えるお金は少なくなるのですが、本質ではないので無視しましょう。

次の年には、1,000,5000円預けていることになるので、利率関わらなければ、5025円利息が付きます。

つまり、前の年より25円増えるわけです。

元本のみに利息が付くことを単利と言います。

前の年までの利息に対しても利息が付くことを複利と言います。

なーんだ、たった25円か、と思われるかもしれません。

しかし、時間がたつと、バカにならなくなります。

安全資産とリスク資産

銀行の預金のように、元本が減らない資産を安全資産(無リスク資産)と言います。

それに対して、株の値段は時々刻々と変化していき、買った値段以下の値段にいなることはざらです。

このように元本割れのリスクがある資産をリスク資産と言います。

こう聞くと、リスク資産を買う意味が分からないかもしれません。

今の銀行の利率は年0.5%程度ですが、目標インフレ率は2%程度なので、価値は目減りしてしまいます。

また、銀行がつぶれてしまうこともなくはありません。

安全資産は短い時間スケールでは安全なのですが、長い時間スケールでリスクがあります。

一方、1つの株の値段は短時間スケールではプラスになったりマイナスになったりします。

また、その価格変動も銘柄(どの会社の株を買うかということ)にもよります。

株には、日経平均やTOPIXなどの指数(インデックス)というものがあります。

指数と言いつつ無次元の数字ではなく、円とかドルなどの単位が付きます。

日経平均はプライム市場から選出された225銘柄の株価を単純に平均した値です(株価平均型)。

TOPIXはプライム市場から選出された1640銘柄の時価総額加重平均の値です。

時価総額加重平均とは、単純な株価の平均ではなく、株式の発行数の重みを付けた平均です。

長期的に見れば、これらの指数は増加する傾向がありますので、指数に合わせて投資をすれば、長時間スケールで利益が出ると考えられます。

指数に合わせて投資する方法をインデックス投資といいます。

例えば、今はやりのオールカントリー(オルカン)はMSCI ACWIという指数に合わせて投資するわけですが、長期的には平均7%のリターンがあると言われています。

実に銀行預金の14倍です。

リスク資産は短期的にはリスクがあるのですが、長期的には増えるということです。

銀行預金の0.5%とオルカンの7%は、実は質的に違うというお話しをしたいと思います。

複利によって投資元本は指数関数的に増える

私が投資を始める前に考えてみたことをお話しします。

すこし数学を使います。

まず、時間t=0t=0にS0S_0円だけ一括で投資し、運用した場合を考えます。

この時、時間ttでの資産S(t)S(t)は、

S(t)=S0(1+r(t1)τ)(1+r(t2)τ)⋯(1+r(tn)τ)S(t)=S_0 (1+ r(t_1)\tau ) (1+r(t_2)\tau ) \cdots (1+r(t_n)\tau )

となります。

ただし、時間τ\tau ごとに1回、r(t)τr(t )\tau だけ運用益が生じるとしますが、株の場合、運用益はその時々によって変わりますので時間の関数とします。

オルカンの場合、τ\tau は一日ですね。

前節でも申しましたように、r(t)τr(t)\tau にはコストも含まれています。

r(t)τr(t)\tau が負の値の場合には損益です。

関数r(t)r(t)の引数となっているt1,t2,⋯,tnt_1, t_2, \cdots, t_nは、運用を始めてから1回目、2回目、・・・、nn回目に運用益が出るタイミングで、

tn=nτt_n =n \tau

です。

指数と対数の性質を使うと、資産S(t)S(t)は、

S(t)=S0e∑k=1nlog⁡(1+r(tk)τ)S(t)=S_0 {\rm e}^{\sum_{k=1}^n \log (1+r(t_k)\tau )}

と書くことができます。

ここで、e{\rm e}は自然対数の底で、log⁡\logは自然対数です。

1回ごとの運用益は0.数%から数%程度ですので(r(t)τ≪1r(t)\tau \ll 1)、

log⁡(1+r(t)τ)≈r(t)τ−12r2(t)τ2+⋯\log(1+r(t)\tau )\approx r(t) \tau -\frac{1}{2} r^2(t)\tau^2 +\cdots

とテイラー展開することができます(この式の⋯\cdotsは、小さくて無視できる項です)。

本当は最初の項r(t)τr(t)\tauだけ残せばいいのでしょうが、注意すべきことひとつあるので第二項まで残しておきます。

すると、資産S(t)S(t)は、

S(t)≈S0e∑k=1n(r(tk)τ−12r2(tk)τ2)S(t)\approx S_0 {\rm e}^{\sum_{k=1}^n(r(t_k) \tau – \frac{1}{2} r^2(t_k) \tau^2)}

となりますね。

これまでは、運用益が出る度にどのように資産が変わるかということを計算してきたわけなのですが、長期投資を考えると、運用益が出るタイミングを均して考えることができます。

つまり、指数の肩の部分を

∑k=0n(r(tk)τ−12r2(tk)τ2)≈∫0rdt′τ(r(t′)τ−12r2(t)τ2)\sum_{k=0}^n(r(t_k)\tau -\frac{1}{2}r^2(t_k)\tau^2) \approx \int_0^r \frac{dt’}{\tau} \, (r(t’) \tau – \frac{1}{2} r^2(t) \tau^2)

と近似できるということです。

もし、第二項を無視してしまうならば、資産は、

S(t)≈S0e∫0tdt′r(t′)S(t)\approx S_0 {\rm e}^{\int_0^t dt’ \, r(t’)}

となります。

なぜ第二項をのこした方がいいと思ったかというと、運用益を平均r0r_0とその周りのゆらぎδr\delta r(変動)に分けましょう。

r(t)=r0+δr(t)r(t) = r_0 + \delta r(t)

ただし、ゆらぎδr\delta rは十分小さく、損益により資産が0になったりマイナスになったりはしないと仮定しましょう。

定義上、ゆらぎの平均もゼロはです(⟨δr⟩=0\langle \delta r \rangle = 0)。

すると、

∫0tdt′τ(r(t)τ−12r2(t)τ2)≈(r0−12⟨δr2⟩τ)t=refft\int_0^t \frac{dt’}{\tau } (r(t) \tau – \frac{1}{2} r^2(t) \tau^2) \approx ( r_0 – \frac{1}{2} \langle \delta r^2 \rangle \tau) t = r_{\rm eff} t

となります。

ただし、⟨δr2⟩\langle \delta r^2 \rangleはゆらぎの自乗平均を表し、簡単のために、

reff=r0−12⟨δr2⟩τr_{\rm eff} = r_0 – \frac{1}{2} \langle \delta r^2 \rangle \tau

と置きました。

つまり、運用益のゆらぎは、プラスになったりマイナスになったりするのですが、平均的に見たらマイナスに働くということです。

結局、資産は、

S(t)=S0erefftS(t) = S_0 {\rm e}^{r_{\rm eff} t}

となります。

複利が効くためには時間が必要

前節の解析から、資産は時間とともに指数関数的に大きくなることがわかります。

また、資産は運用する時間によるのですが、いつ運用を始めるかということにはよりません。

しかし、これは、単位時間当たりの運用益r(t)r(t)自体は時間によるけれども、その背後にある確率は時間によらないという仮定から来たものであるので、実際に成り立つかどうかわかりません。

単位時間あたりの実効運用益であるreffr_{\rm eff}は配当金やコストなどが(ゆらぎによる効果さえも)含まれたものですので、オルカンなどでいわれている年利5 – 7%はこれに対応します。

運用時間が短く、refft<1r_{\rm eff} t < 1であるときには、資産は

S(t)≈S0(1+refft)S(t) \approx S_0 (1 + r_{\rm eff} t)

と近似することができます。

これは、元本のみに運用益がかかることを意味しており、「単利」の状況だということを表しています。

一方、運用時間が長くrefft>1r_{\rm eff} t > 1となるとこのような近似が使えなくなりますので、複利の効果が期待できます。

したがって、複利が効くまでの時間tct_{\rm c}は

refftc≈1r_{\rm eff} t_{\rm c} \approx 1

から見積もることができます。

年利5-7%ですと、時間tct_{\rm c}は15-20年となりますので、巷で15年は保有しろと言われているのは、それに対応するのでしょう。

逆に、○○円から複利が実感できるという動画も見受けられますが、どちらかというと資産額というよりは時間が複利効果には重要で、額は感覚の問題かと思います。

ところで、国債の利率1%だと複利効果が効くまで100年程度かかります。

銀行の利息0.5%だと200年以上です。

インデックス投資の15-20年は長いですが、十分現実的ですよね。

その意味で、インデックス投資は、銀行預金や国債と一線を画すのだと思います。

ただし、今回の解析では暴落などの現象は考慮に入れられていないことは含みおきください。

分散投資の意味

先ほど、実効的な運用益が

reff=r0−12⟨δr2⟩τr_{\rm eff} = r_0 – \frac{1}{2} \langle \delta r^2 \rangle \tau

となることをお話しました。

つまり、実効的な運用益を上げるためには、平均の運用益r0r_0を大きくするか、ゆらぎδr(t)\delta r(t)を小さくする必要があります。

ゆらぎを小さくするためには、できるだけ分散して投資し、様々な銘柄の益と損を打ち消すことが戦略となります。

このことは、計算したときには気づきませんでした。

あるYou Tube動画で知りました。

投資信託を選ぶときにはコストの低いものを選ぼう

投資信託などに投資をしている場合には、信託報酬などのコストがかかっている場合があります。

コストは平均の運用益r0r_0を下げる働きがあります。

平均運用益を大きくする戦略としては、コストの低い投資信託を選ぶことになります。

積み立て投資

つぎに、積み立て投資の場合について考えてみましょう。

ドルコスト平均法という、毎月一定額投資するやりかたですね。

積み立て投資の場合、積み立てごとに投資タイミングをずらすことになるので、資産額は、

S(t)=∫0tdt′s(t′)ereff(t−t′)S(t)= \int_0^t dt’ s(t’) {\rm e}^{r_{\rm eff} (t-t’)}

となります。

数学では畳み込み積分といわれているやつですね。

s(t)s(t)は単位時間ごとの積み立て額です。

ほとんどの人はそうしていると思いますし、簡単のために、積み立てを一定額s0s_0にすると、

S(t)=∫0tdt′s0ereff(t−t′)=s0terefft−1refftS(t)= \int_0^t dt’ s_0 {\rm e}^{r_{\rm eff} (t-t’)} = s_0 t \frac{{\rm e}^{r_{\rm eff} t} – 1}{r_{\rm eff} t}

となります。

s0ts_0 tがこれまでの積み立て額の合計となるので、一括投資の場合と比べると、だいぶ資産額が減ることになります。

とはいえ、このモデルでは暴落を考えていないので、暴落対策である積み立て投資(ドルコスト平均法)が一括投資に勝てないのは、そりゃそうかという感じです。

ABOUT ME
山本哲也
山本哲也
キンメダイ美術館のサイエンティスト
電子工学で学位を取得後、理論物理学者になるため、ドイツ、イスラエル、中国で修行。現在は、習得した理論物理学を使って遺伝子発現制御のメカニズムを明らかにする研究をしています。研究だけでなく、趣味やいろいろ考えていることなどお話ししたいと思います。
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