海外まで行って3年かかって見つけた答えが「ラブライブサンシャイン」の出した答えと同じだった件

tetsu

憧れてもいいが追いかけてはならない

前回のブログでは、私が、所属研究室をたびたび訪れていた中国科学院理論物理学研究所の欧陽鐘燦先生に憧れて理論物理学者を目指したことをお話ししました。

欧陽先生は、赤血球がなぜ真ん中がへこんでいる円盤型のかたちをしているのかということを脂質膜の力学理論を使って説明した理論物理学者です。

脂質膜は、リン脂質分子の単分子膜が二つ向かい合って重なった二重膜構造を形成しています。

私は、博士課程修了後に、ドイツのマックスプランク研究所(Max Planck Institute for Colloids and Interfaces)とイスラエルのヴァイツマン研究所(Weizann Institute for Science)でポスドク研究員として脂質二重膜の理論研究をすることにしました。

そこで、脂質膜の研究を詳しく語ってしまうとまた話がそれるので、端的に言います。

当時は、脂質ラフトとよばれる細胞膜上の構造が流行していました。

ヨーロッパの会議に出席すると、脂質ラフトかpHを変えて脂質膜を変形する研究ばかりで、脂質膜研究に奥行きがないことを知ることになったのです。

そう、欧陽先生の時代には、脂質膜研究で新しい発見をする余地がたくさんあったのですが、私の時代になるとその間に主要な発見はされつくしていて、脂質研究が飽和していたのです。

現代科学においては、ひとつの分野はひとりの研究者の研究者人生くらいの間にほぼ完成してしまうのです。

過去の偉人に憧れてもいいのですが、追いかけてはいけないのです。

この事実に気付くまで、私は3年くらいかかってしまいました。

学生時代をどうカウントしていいのかわかりませんが、学生時代もそれに含まれるのならばもっとです。

大真面目にラブライブサンシャインは研究者の必修科目

ラブライブサンシャインというアニメ作品があります。

大真面目に、このアニメ作品は研究者必修だと思っています。

このアニメ作品は、高校の部活動としてのアイドル活動であるスクールアイドルの話です。

タイトルのラブライブというのは、高校野球でいうところの甲子園みたいなもので全国大会の名前です。

2シーズンにわたって放映されまして、第一期は「0から1」、第二期は「1からその先」がテーマです。

スクールアイドルというものがない世界に初めてその概念を作ることから始めたという話ではないので、真の意味での「0」ではないかもしれません。

しかし、多くの研究者が現在置かれている状況で何をするかということと通ずるものがあるので少しお話ししたいと思います。

伝説的なスクールアイドルであるμs(ミューズ)が活躍してから数年経った静岡の内浦という港町の高校が舞台となります。

多くの高校で普通にアイドル部があり、力のあるスクールアイドルが無数にいる状況で、μsに憧れた高海千歌ちゃんがアイドル部を作って、ラブライブを目指す話です。

今の時代に研究者になる人のほとんどは、千歌ちゃんと同じように、すでに開拓された分野で、すでに多くの力のある研究者がいる状況で、学生として研究室に所属して研究を始めると思います。

千歌ちゃんと違うことがあるとすると、研究室の教授がいるので、その分野の知識を得ることは容易いし、学会デビューをするのもスムーズですが、主体的に行動するのはむずかしいというところでしょうか。

なんでこのアニメ作品が必修かというのをお話しするためには、だいぶネタバレを踏む必要があるのですが、このブログの読者がネタバレなしでラブライブサンシャインを見るかというと、見ない気もするので、そのままお話ししちゃいたいと思います。

あらすじを言うと長くなるので、一番重要な第1期の第12話(最終回の手前)の話から始めます。

ラブライブの地区予選をどうにか勝ち残った千歌ちゃんたちですが、同じころにμsが実現していた目標に届かなかったというところから物語が始まります。

なぜ自分たちはその目標を実現することができなかったのか、μsは何がすごかったのかということを知るために、千歌ちゃんたちはμsが活動していた東京を訪れることにします。

以前交流を持った同世代のスクールアイドルと会い、μsの何がすごかったのかというテーマについて話し合います。

そのスクールアイドルは、ラブライブで優勝してμsと同じ目線になってみないとわかないという結論に至っていることを語ります。

つまり、オンリーワンよりもナンバーワンの思考ですね。

その後、千歌ちゃんたちは、μsがいた高校である音ノ木坂学院を訪れることにします。

偶然通りかかった学生に、μsはラブライブで優勝した後、心はつながっているからと高校には何も残していかなかったと告げられます。

そして、千歌ちゃんたちは、静岡へ帰ることにしますが、途中下車して海を見に行きます。

海を見ている間に、他のメンバーに、今回の東京訪問で得たことがあったかと聞かれます。

そこでの答えをせっかくなので抜粋します(著作権上、問題があったら消します)。

「私、分かった気がする。μsの何がすごかったのか。たぶん、比べちゃダメなんだよ。追いかけちゃダメなんだよ。μsも。ラブライブも。輝きも。」

「μsのすごいところって、きっと何もないところを何もない場所を思いっきり走ったことだと思う。みんなの夢をかなえるために。自由にまっすぐに。だから翔べたんだ。」

「μsみたいに輝くってことは、μsの背中を追いかけることじゃない。自由に走るってことなんじゃないかな。全身全霊、何にもとらわれずに。自分たちの気持ちに従って。」

いやー、この答えにたどり着くのに、私は海外にまでいって3年もかかってしまいましたね。

思いっきり走るだけじゃダメなんですよ。

何もないところ、何もない場所(つまり、「0」といいますか、ブルーオーシャンといいますか)をまず見つけなくてはならないのですね。

オンリーワンの考え方です。

何もないところを何もない場所を見つけて全力で走っている、優秀な研究者はたくさんいます。

しかし、意識しているかしていないかに関わらず、過去の偉人、自分が学生や助教だった時の所属研究室の教授の先生、過去の日本のノーベル賞受賞者の背中を追いかけている人もたくさんいます。

シナリオをとっても、美術面をとっても非常に優れたアニメ作品ですので、研究者の方々、研究者を目指す方々には、ぜひラブライブサンシャインを見てもらいたいと思っています。

ABOUT ME
山本哲也
山本哲也
キンメダイ美術館のサイエンティスト
電子工学で学位を取得後、理論物理学者になるため、ドイツ、イスラエル、中国で修行。現在は、習得した理論物理学を使って遺伝子発現制御のメカニズムを明らかにする研究をしています。研究だけでなく、趣味やいろいろ考えていることなどお話ししたいと思います。
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