重要なのは習ったこと「まんま」ではない

tetsu

学生時代には、岩本光正先生の研究室で誘電物性を学びました。

誘電性というのは、物質が電気をためる性質です。

パソコンのマザーボードなどについているコンデンサ(キャパシタ)は誘電材料を応用した例です。

現在価格高騰が取りざたされるメモリも誘電性を利用して、電気がたまっているかたまっていないかで0と1を記憶する機能を実現しています。

誘電性を表すパラメータの1つとして誘電率があります。

電磁気学によると、屈折率は誘電率の平方根ですので、誘電材料は光材料でもあります。

電気と光は周波数がだいぶ違うので、それをカウントしなくてはならないのですが(誘電分散)。

液晶ディスプレイは、液晶の誘電性が異方的であり、電圧をかけることによってその光学的性質を制御することができることを利用してディスプレイ機能を実現しています。

以上は、物質の界面部分の大きさが界面よりも十分大きくなるような、比較的大きい物質で観察される誘電現象です。

これが、単分子レベルの小さい物質になると、界面の影響が大きくなり、さらに豊富な誘電現象が観察されます。

岩本先生の研究室では、水面上単分子膜をモデル系として、界面の誘電現象の研究をしていました。

学生時代は、誘電物理と電磁気学を極めたつもりです。

しかし、現在は、誘電物理と電磁気学を全くと言って良いほど使っていません。

学び始めのときには成長が著しいですが、その成長速度が未来永劫続くわけではなく、ある程度極めてしまうと飽和していきます。

得意なことばかりやっていて、成長しない人をたくさん見てきました。

なので、私は極めたものから封印する習慣を持っています。

それでも誘電物性や電磁気学は私の中で生きていて、転写と誘電物性の中にある共通の本質があることに気付いて、DNAブラシの転写ダイナミクスの理論を作りました[1]。

トランジスタやダイオードなどの電子素子は、半導体の界面を利用して設計されます。

液晶ディスプレイの画素も、電圧をかけていないデフォルトの状態は、ラビングという手法によって、界面の液晶を並べることで実現しています。

このように電子工学では、有用な機能を持つ電子素子の設計するためには、界面を利用することが多いです。

私は現在遺伝子発現制御の研究を行っていますが、生命も有用な機能を実現しているならば、界面を利用するのではないかと考える傾向があります。

たぶん、重要なのは習ったこと「まんま」ではなく、その中にある本質や考え方、示唆など、その裏側にあることなんですよね。

そもそも、習ったこと「まんま」は分かっていることであって、研究の現場で使えることはあまりありません。

アインシュタインが言う”Education is what remains after one has forgotten what has learned in school.”(教育とは、学校で習ったことを忘れたあとに残ったもののことだ)の意味がわかります。

しかし、教育者として考えると、そのようなものを意図的に含ませて教育を設計することができるものなのか、まだ私はわかりません。

できることあるとすれば、重要なことは「まんま」ではないことを伝えるくらいです。。。

参考文献

1.T. Yamamoto and S. A. Safran, Transcription rates in DNA brushes, Soft Matter, 11: 3017-3021 (2015). doi: https://doi.org/10.1039/C4SM02871F

ABOUT ME
山本哲也
山本哲也
キンメダイ美術館のサイエンティスト
電子工学で学位を取得後、理論物理学者になるため、ドイツ、イスラエル、中国で修行。現在は、習得した理論物理学を使って遺伝子発現制御のメカニズムを明らかにする研究をしています。研究だけでなく、趣味やいろいろ考えていることなどお話ししたいと思います。
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