天才は日常を味方につける

tetsu

イスラエルでポスドクをしていたとき、イタリア人のポスドクとルームシェアをしていました。

それで、よくそのイタリア人ポスドクと共にしていて、ヴァイツマン研究所で行われているヘブライ語の授業も一緒に受けていました。

ご存じの通り、ヨーロッパの人はさまざまな言語を操ります。

ヨーロッパ人は言語の天才であって、我々とは違うのだと思っているかもしれません。

そういうところもあるのかもしれませんが、一緒に行動していると気づくことがあります。

イスラエルにいるので、周りのお店や交通表示などにヘブライ語が書かれています。

それらを、その時の実力でどれだけ読めるか試してみるんですね。

仕事で使うほどのヘブライ語は習っていないので無理ですが、生活で使う分にはどんどん使っていきます。

そう、ヘブライ語を日常化することによって、自分に定着するのです。

中国でポスドクしていたときのボスである土井正男先生は、身の回りの現象を対象として物理を作られています。

土井先生と研究を始めてから、筆の研究をする機会を得ました。

その他にも、イグノーベル賞を取ったバナナの皮滑りやすさの説明[1]に納得がいかないからゲルの視点から研究をしようとか[2-4]、食虫植物は筋肉がないのにどのように動くのかとか[5]、土井先生の提案する日常のサイエンスに取り組みました。

土井先生と研究をしてからというもの、日常生活を送りながら、自分が知っているサイエンスで説明できるかどうかというのをいちいち考える習慣ができました。

また、新しいサイエンスのヒントを逃してしまう気がして、家事は自分でしなければならないと思うようになりました。

日常生活の中で新しいサイエンスのヒントを得ることができれば、最強ですよね。

なにもオフィスのデスクで計算したり、サーバーにジョブを投げたり、ラボで実験することだけが研究ではありません。

大切なことはすぐ近くにあるのです。

このことは、教育という意味でも非常に重要なことだと思います。

お子様がいる読者の方は、ぜひ家事のお手伝いをしてもらい、学校で習ったことを使ってどのように理解できるか考える習慣をつけてあげてください。

天才・・・になれるかどうかは保証できませんが、少なくとも「勉強のできるおバカさん」にはなるのは防ぐことができると思います。

参考文献

1.K. Mabuchi, K. Tanaka, D. Uchijima, and R. Sakai, Frictional Coefficient under Banana Skin, Tribology Online, 7: 147-151 (2012). doi: https://doi.org/10.2474/trol.7.147

2.T. Yamamoto, Y. Masubuchi, and M. Doi, Large Network Swelling and Solvent Redistribution Are Necessary for Polymer Gels to Show Negative Normal Stress, ACS Macro Lett., 6: 512–514 (2017). doi: https://doi.org/10.1021/acsmacrolett.7b00153

3.T. Yamamoto, Y. Masubuchi, and M. Doi, Relaxation Dynamics of the Normal Stress of Polymer Gels. Macromolecules, 50: 5208–5213 (2017). doi: https://doi.org/10.1021/acs.macromol.7b00572

4.T. Yamamoto, Y. Masubuchi, and M. Doi, Shear induced formation of lubrication layers of negative normal stress gels. Soft Matter, 13: 6515-6520 (2017). doi: https://doi.org/10.1039/C7SM01316G

5.T. Yamamoto, Y. Masubuchi, and M. Doi, Coil-globule transitions drive discontinuous volume conserving deformation in locally restrained gels. Nat. Comm., 9: 2062 (2018). doi: https://doi.org/10.1038/s41467-018-04533-w

ABOUT ME
山本哲也
山本哲也
キンメダイ美術館のサイエンティスト
電子工学で学位を取得後、理論物理学者になるため、ドイツ、イスラエル、中国で修行。現在は、習得した理論物理学を使って遺伝子発現制御のメカニズムを明らかにする研究をしています。研究だけでなく、趣味やいろいろ考えていることなどお話ししたいと思います。
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