研究室の教育的役割についてー「恋する小惑星」に学ぶ
研究室での教育
少なくとも大学の理系の学科では、4年になると(大学によっては3年)、研究室に配属されて研究をすることになります。
その間に、その研究室の主任である教授、准教授、助教の先生や先輩たちに研究のやり方を学びます。
科学者になる場合には、大学を卒業した後(4年)、大学院に進みます。
大学院では、修士課程(博士前期課程というところもある)としてさらに2年、博士課程(博士後期課程というところもある)としてそのさらに約3年、研究室で研究を行うこととなります。
約3年といったのは、場合によっては2.5年くらいに短縮することもあれば、5年くらいに伸びることもあるからです。
そこまでになると、誰もあなたを教育することはできないので、自分の知りたいことを自分で探求する方法(つまり、研究)を学ぶわけですね。
研究室は、教授、准教授、助教などのスタッフ以外にも、先輩や後輩、同期がいます。
特に工学では、ほとんどの学生は修士課程を修了した後、企業に就職します。
博士課程の学生がたくさんいる研究室はめずらしいです。
私は学部4年から博士3年まで、岩本光正先生の研究室で研究をしていたのですが、たまたま同期の3人が博士課程まで進学して、さらに、外部から2人加わったので、5人同期がいました。
外部から加わった2人は厳密には半年先輩ですが、元からいた3人も、私が2.5年で卒業し、1人は3年で卒業し、もう1人は3.5年で卒業したので、1年くらいはぶれますし、精神的には同期だったと思います。
さらに、1つ下の年代の子も1人博士課程に進み、そのまた下の世代の子も2人博士に進むという、博士学生が多い黄金時代でした。
研究室では、学生が自分の研究の進捗をメンバー全員に発表するセミナー(研究室によって呼称が異なる場合もあり)が定期的にあることが多いです。
また、多くの時間を共有しますので、自分の研究の話を学生間ですることも多いです。
そのため、自分の研究の知識だけではなく、他の学生が取り組んでいる研究に関する知識も増えていき、場合によっては関心もわいてきます。
研究をしていく上で、他の分野の考え方を取り入れることが重要になることがしばしばあります。
エキスパートというと聞こえはいいですが、本当に自分の研究のことしか知らず考え方にバラエティーがないと、研究を進める上でだいぶすぐに限界が来ます。
その限界を突破できない人は、同じような研究を一生やっています。
そのため、研究室の他の学生の研究を知っておくことは、将来とても重要になることが多いです。
教育的な観点からいうと、研究テーマが学生さんごとにだいぶ違うという状況が最適な研究室の設計になるのだと思います。
ただ、離れすぎると、今度は学生さん同士のコミュニケーションが難しくなるので、バランスは必要かもしれません。
恋する小惑星(アステロイド)
恋する小惑星は、2020年に放映されたアニメ作品ですが、研究室の役割を端的に描いていておもしろかったです。
原作は4コマ漫画らしく、それをよく30分x12回のアニメ作品にしたなと感心するばかりです。
このアニメ作品は、主人公の木ノ幡みらちゃんが、小さな子供のころ、同年代で星に詳しい真中あおちゃんと会い、「みら」という名前がくじら座の変光星であることを教えてもらいます。
真中あおちゃんの名前の「あお」という星がないことから、「あお」という名前を付けるために、新しい小惑星を発見することを決意します。
あおちゃんは、その後すぐに引っ越しでいなくなっちゃったようです。
小さい子供の頃の話は冒頭5分くらいで、物語はみらちゃんが高校に入学するところから始まります。
みらちゃんは、小惑星を発見するために天文学部に意気揚々と入部することを決意するわけですが、その高校では天文学部が廃部になったことを知ります。
代わりに、天文学部と地質学研究会が合併し、地学部になりました。
地学部に体験入部してみると、合併したばかりで、先輩たちもどうしていいかわからない状況です。
また、実はあおちゃんが同じ高校に入学していて、体験入部で再会します。
そこで、改めて2人で小惑星の発見を目指すという物語です。
天文学に興味を持っているメンバーは天文班として、地質学に興味を持っているメンバーは地質班として活動することになります。
後輩が入ってくる頃には気象班も増えます。
面白いと思ったのは、天文学をやりたいみらちゃんやあおちゃんたちは、地質学班との時間を共有するにつれて、地質学にも関心が出てきます。
逆に、元地質学班のメンバーも、天文学班との時間を共有するにつれて、天文学にも興味を持ってきます。
これは、研究室にも言えて、いろいろな人と時間を共有することで、お互いの研究に関心を持つことができることが研究室の教育的意義なのではないかと思います。
一般の方にとってはマニアックな世界なのであまり評価されなかったようですが、研究者にとっては初心を取り戻せるアニメ作品だと思いますので、ぜひ見てみてください。
純粋に未知なるものを知るために研究を行っているプロの研究者をたくさん知っています。
しかし、残念ながら、そのような研究者の割合は非常に低く、社会的地位や大学にぶら下がって生き残ることのほうがはるかに関心が高い人の方が多い印象を受けます。
Einsteinの言う”Science is a wonderful thing if one does not earn one’s living at it.”(サイエンスは素晴らしいものだ。それから生活のための給料を稼がないならば。)の意味がよくわかります。
私は現在化学の研究所にいるため、そのバイアスもあるかもしれません。
しかし、そのような人にこそ、「恋する小惑星」を見てほしい。
物語で伝える
ただ、恋する小惑星を見て、耳が痛いことがあります。
地学部の活動のひとつとして、会報「KIRA KIRA」を発行することにします。
そこで、みらちゃんは記事を書いて、彼女のお姉さんに読んでもらうのですが、説明的な文章で眠くなるという感想をもらいます。
「説明する文章なんだからしょうがないじゃん。」と反発するみらちゃんですが、生徒会長であるお姉さんも、生徒会の会報などのおかたいことをどのように伝えるかということに関しては苦悩していることを伝えます。
結局、みらちゃんは、自身のイラストレーションの才能を生かし、4コマ漫画で伝えることにします。
私も、サイエンスをどうやって伝えればいいかなぁ、と思いながらブログを書いてます。
